大人気らしいこの映画ですが、とりあえずピークを過ぎてから見に行きました。
【ストーリー】
発見された男性の死体は顔がつぶされ、指を焼かれていた。死因は絞殺。身元は富樫慎二(無職)であることが判明。貝塚北警察署の刑事・内海薫は捜査に乗り出す。富樫の別れた妻、花岡靖子のアリバイを確認していたある日、その隣人が湯川と同じ帝都大出身者であることを内海は知る。隣人の名は、石神哲哉。高校で数学教師をしている。物理学者・湯川学にとって「僕の知る限り、本物の天才」と評する男だ。
内海から事件の相談を受けた湯川は、天才的頭脳の持ち主故に、かつて唯一理解し合うことができた”親友”が事件のウラにいるのではないかと推理する…。
虚言、盲点、心理戦、ブラフ、様々なトリックが複雑に絡まった天才数学者が仕掛けた難問に「探偵ガリレオ」が挑む!
(公式ホームページ(http://yougisha-x.com/)より引用
【感想…面白いのだけれど、何かが足りない】
派手な宣伝活動が行われたせいもあるのでしょうが、思ったより面白みに欠けました。いや、面白いのですが、期待したものが大きくなりすぎていて、見た後に「これだけ?」というのが正直な感想です。
公式ホームページから引用したストーリーにあるように「虚言」「盲点」「心理戦」などは展開されてはいるのですが、いろいろなことを映像で表現しようとしたがためにすべてが中途半端になっている感が否めません。小説だときっと「心理戦」の部分も面白いのでしょうし、「盲点」の部分も、きっと地の文で読者をミスリードする手法が使われているものと想像できます。
しかし、映像にしたとき、そのすべては「観客」の捉え方によって変化してしまいます。
心理戦は心の読み合いですが、それは役者の演技力にかかります。映像の場合、コマ割りや音楽など、すべての演出効果を動員して初めて理解可能かどうかの瀬戸際になる程度です。
湯川も苦悩するほど苦悩しているようには見えなかったのです。湯川は非常にクールな人間ですから、苦悩することを表現するのはほぼ不可能でしょう。だからこそ、じっくり時間をかけて映像を差し挟んで欲しかったのですが、商業映画という特性でカットされてしまったのでしょう。そもそも全体的に長いですしね。
推理物のストーリー上、偶然が推理に大きな影響を与えるのは仕方がないことなのですが、少し表現があからさま過ぎましたか。
容疑者の隣人が湯川の知り合い(石神)であることから、湯川は石神を疑うことになりますが、この伏線が映像では大きく取り上げられすぎています。ほんの些細な出来事が、事件の真相に絡む、というのが理想だと思うので、もう少し扱いを小さくしてもよかったのではないかと思うのです(具体的には…ポストに入っていた封筒のシーンです)。
でも、トリックも容疑者側の心理も非常にきれいに映像化されていたと思います。
もう少し、観客に提供する情報の重要度の取り扱いを取捨選択した方が、ストーリーが盛り上がるのかなぁと思いました。
もちろん、初めから湯川VS石神の構図であることは分かっているので敢えて、という作りなのかもしれないのですが、せっかくタイトルが「容疑者Xの献身」なのだから、もう少しひねってもよかったのだろうと思うのです。
【評点…★★☆☆☆】映画館で見るほどのものでは…
ストーリーもよかったですし、映像も奇麗なのですが、劇的な音響効果があるわけでもなく、迫力のある映像があるわけでもなし。原作の小説があるという点からも、わざわざ映画館で見る必要はない、と判断します。
もっとも、原作には内海薫はいないようですが…
推理物、という点から後で「見直したい!」という点を感じさせるものでもあれば良かったのですが、丁寧に作りこまれているせいで、伏線がちょっとした引っ掛かりにとどまらず、完全に印象に残ってしまうので、一度見ればいいや、という印象を受けました。
映画館で特段見る必要もなく、DVD化されてもレンタルで十分、という感想を持ったので、この評定となりました。
担当:逢川