あまり知られていない隠れた良品みたいなマンガを紹介しようと思っていたが、アニメ化するとのこと。これ以上メジャー化する前にと思って投稿。
【ストーリー】
超能力者の存在が認知されている社会。最強の超能力を持つ3人の少女(10歳)達が様々な事件を解決する。
【解説】
「GS美神 極楽大作戦」で大ヒットを飛ばした椎名高志が「ミスタージパング」「一番星のカナタ」と不発に終わってしまった連載の後、綿密な下準備とリサーチの上に連載を開始した(と思われる)作品。
舞台は現代日本そのものの社会であるため、親しみやすい。解決する事件は超能力犯罪、事故、自然災害等幅が広く、政府機関に属しているため、「任務」ということで無理なく事件に関わることができる。つまり、「世界を救う」とか「悪の帝王を倒す」のような終わりがないので、ネタの続く限り連載続行が可能な仕掛けとなっている。
主人公の3人は子供ゆえにわがままで思慮が足りないところがあり、そのために失敗したりもする。ここに「大人」が入り込む余地がある。指導したり見守ったりする大人を準主役として設定することにより、小中学生から大人までキャラクターに感情移入できる仕掛けとなっている。
ストーリー自体も面白い。基本はギャグ路線なのだが、様々な状況に対し、強大な超能力で解決したり、大人の知恵で解決したり、時には子供特有のまっすぐな心で解決したりと、爽快感のある展開となっている。
まさに、お子様から大人まで楽しめるマンガと言える。
【俺推しポイント】
このマンガに最初に注目したのは「超能力者が一般に認知されているものの、危険視し抹殺しようとする人々がいる」というありがちな設定を上手く料理しているところだった。
主人公達は「あいつらは悪魔だ、犯罪予備軍だ」と罵られながら、また、「大人達に利用されているにすぎないのではないか」と自問する。ところがへこんでばかりではなく、「うるせー、コノヤロー」と元気一杯逆境を撥ね返してしまう。苦境を乗り越える子供達、それを支え見守る大人達のドラマが展開され、読んでいて気持ちがいい。
しかしながら、特筆すべきは、超能力排斥団体「普通の人々」の存在である。超能力を持たない普通人による超能力者を抹殺することを目的とした団体で要はテロリスト。彼らは目的のために徒党を組み、周到に計画を練り、襲いかかってくる。しかも、超能力者が嫌いなだけの一般人が構成員のため正体がつかめない。近所でも評判の人のいい主婦が後ろから包丁で刺してくるかもしれず、警察も病院も安心して頼ることはできないのだ。
敵役として設定された「普通の人々」に対し「もし自分が狙われたら」と恐怖した記憶がある。理不尽な理由で突然攻撃されるとしたら怖い社会だと思ったのだ。そしてそのような敵役が少年マンガで設定されていることに、「小中学生がこれを読んでどう思うのだろうか」と思った。もっとも、前述のとおり、基本はギャグなので、人が死んだりすることは滅多に無いのだが。
作者が敵役としては濃すぎると思ったのかどうか、「普通の人々」は初期の頃にしか登場せず、以降の敵役は主に「かつて普通人に裏切られた超能力犯罪者」となる。実はそうなってからの方がストーリー的にも波に乗っていて面白いのだが、何しろ「普通の人々」のような敵役が登場するようなマンガなら読み続けよう、と決めたのだった。